少し前まではグラスロッドは重いし腰がなく反発力が弱い昔の安物ロッドという位置づけでしたが、1980年代までは釣り竿といえばグラスロッドが大半でした。
その後、炭素繊維強化プラスティックスを使用したカーボンロッドが多く作られるようになり、グラスロッドより軽くて強いカーボンロッドが主流になっていきました。
近年の渓流ベイトフィネスブームにより、再びグラスロッドへの注目が集まるようになりましたが、グラスロッドがなぜ人気なのか、その理由を探ってみたいと思います。
渓流ベイトフィネスはショートロッドが主体
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渓流ベイトフィネスは、渓流といった草木や岩などの障害物の多い場所が主なフィールドとなります。
河川規模が小さくなればなるほど、それに合わせてロッドも短くした方が利点が多くなるのですが、ベイトロッドはガイド数も多くどうしても硬めの竿になってしまうため、柔らかさを残して短くするためには竿を細く作る必要があります。
カーボンロッドで竿を短くするには強度の限界がある
主流のカーボンロッドだと柔らかさを残したまま短くするには限界があって、曲がらず投げにくいロッドになってしまうか、もしくは折れやすいロッドとなってしまいます。
一方でグラスロッドは柔らかく非常によく曲がるため、短くしてもある程度曲がってくれるロッドが作りやすいといった利点があります。
グラスロッドの特徴
グラスロッドはガラス繊維と樹脂で作られているロッドで、良く曲がり折れにくいといった特徴があります。
渓流ベイトフィネスでグラスロッドを使うメリット
グラスロッドは曲がりやすいので柔らかさを活かしたキャストが可能です。
折れにくい
グラスロッドは耐久性が強く柔らかく良く曲がるので、多少無理な力が掛かっても折れにくいといった特徴があります。
ロッドの許容範囲を超えるような力が加わった場合でも、その柔らかさで力を吸収してくれるので折れることはほとんどありません。
低弾道で鋭いキャストが可能
反発力の強いカーボンロッドは曲がった後の戻りが早いのでコントロールが難しいのですが、グラスロッドはルアーウェイトをロッドにしっかり乗せられるので、低弾道で鋭いキャストがしやすくなります。
渓流特有の木が覆いかぶさっているような難しいポイントや、岩と岩の隙間など、ピンポイントへのキャストが必要なシーンでは高い能力を発揮します。
軽量ルアーが投げやすい
軽量で空気抵抗の大きいフローティングミノーなどは硬い竿ではキャストが難しいですが、グラスロッドの場合はよく曲がりるため、ルアーウェイトをしっかり乗せてキャストできます。
ルアーウェイトを乗せやすいロッドは、キャスト精度も高くミスキャストも少なくなるため、キャストが苦手な方でもある程度ロッドがカバーしてくれます。
バラシが減る
グラスロッドの柔らかさが魚の抵抗を受け止めるクッションとなり、バラシ軽減に繋がります。
渓流魚の中でも特に頭を振って大きくジャンプするニジマスなどに対しても、ロッドの弾力でいなしてくれるため、バラシ軽減に対して高い効果を発揮します。また、ダウンストリームでの啄むようなショートバイトはカーボンロッドではバイトを弾いてしまうようなシーンでも、グラスロッドはティップが追従してくれるので、小さなバイトでもフッキングに持ち込めるという利点があります。
渓流ベイトフィネスでグラスロッドを使うデメリット
グラスロッドは柔らかく良く曲がるので軽量のルアーを投げやすいですが、逆に柔らかさが仇となるケースもあります。
ルアーの細かい操作が苦手
ロッドの柔らかさがアクションを吸収してしまい、トゥイッチしてもあまり変化が現れないことがあります。
特に夏場などの魚が果敢にルアーを追う季節には、キビキビとした細かいアクションが有効となることも多いので、場合によってはグラスロッドが不利になることもあります。
パワーがない
グラスロッドはカーボンロッドに比べて、曲がってから戻る力が弱いので、大型魚が掛かるとパワー負けしてしまうことがあります。
バラしにくいといったメリットもありますが、渓流魚特有の素早い走りを見せる魚に対しては、近くに寄せてランディングの体制に入るまでかなりスリリングなやりとりになります。
フッキングが弱い
早い流れの中アップストリームでルアーを引いてくると、カーボンロッドではロッドの反発力の恩恵により向こう合わせで勝手に掛かってくれるようなシーンが多いですが、グラスロッドは柔らかい分魚のバイトを吸収してしまい、フッキングが弱く、慣れるまではバラシが多くなることがあります。
重量がある
グラスロッドはカーボンロッドに比べて重量があるので、一日中ロッドを振っているとかなり疲れます。
特に渓流ベイトフィネスは、手返しが早くキャスト回数も多くなりがちなので、手首や腕に負担がかかります。
最近は中空タイプの軽量のグラスロッドも作られていますが、カーボンロッドよりも高額な高級ロッドが多いです。
カーボンロッドの特徴
カーボン素材は非常に丈夫なため、ロッドの中を空洞にすることができます。
カーボンロッドはで軽くて丈夫な素材のため、中空にすることでさらに軽量化が可能となります。
カーボン素材は、投げ竿や延竿など様々なロッドでも使われていますが、ルアーロッドにも最適な素材です。
渓流ベイトフィネスでカーボンロッドを使うメリット
カーボンロッドは、反発力が強く少ない力で遠くに飛ばす能力に優れています。
しっかり曲げて投げることができれば、ロッドのポテンシャル以上の飛距離を出すことも可能です。
細かいルアーの操作が得意
トゥイッチングがしやすくルアーが水の抵抗を受けている感覚をつかみやすいので、複雑な水中の流れも把握できルアーの操作がしやすいといった利点があります。
急流でのダウンストリームでもロッドの強さが流れに負けずにルアーを引くことができるため、渓流トラウト特有の啄むような小さなアタリも感じ取ることができます。
大型魚にもパワー負けしない
カーボンロッドは力の強い大型のトラウトにもパワー負けしないので、安心してやり取りができます。
渓流ベイトフィネスでカーボンロッドを使うデメリット
カーボンロッドは反発力が強く、ルアーの操作がしやすい反面、反発力の強さが仇となるケースも存在します。
キャストが難しい
カーボンロッドはキャスト時はしっかり竿を曲げる必要があります。
特に渓流ベイトフィネスは、ショートロッドが主体なため、曲がりにくいロッドが多くしっかりと曲げられるようになるための練習が必要です。
バラシが多くなる
カーボンロッドの反発力が仇となり、魚をバラしてしまうことも多くあります。
トラウトはルアーに食いついた瞬間、反転することが多く、反転した時に受けたロッドの反発力に驚き体をくねらせて針を外しにかかります。
反発力の強いカーボンロッドは、魚が暴れた際にテンションが抜けやすく、結果的にバラシやすくなるためシビアなドラグ調整が必要となります。
ロッドが曲がる限界値が低い
カーボンロッドは非常に丈夫なロッドですが、グラスロッドに比べて曲がりの限界値は低く、その限界値を超えると簡単に折れます。
特にロッドの一部分だけに力が加わった場合や、瞬間的に大きな力が加わった時は高い頻度で折れます。
渓流ベイトフィネスは目的に合わせてロッドを選択する
カーボンロッドもグラスロッドも一長一短ありますが、それぞれの特徴を把握していれば、どちらもそれほどトラブルが頻発することはありません。
タックルの性能に頼る
グラスロッドはキャストしやすい反面、ルアーの操作が難しいので操作しやすいルアーを選択するというのも有効な手段です。
また、キャストについては、グラスもカーボンもティップが柔らかくバットにパワーのあるロッドを選ぶというのが大事なポイントです。
キャストの面においてはグラスロッドの方が有利な部分が多いので、キャストが苦手という場合はグラスロッドを選択するというのも一つの方法です。
キャストにしてもルアーの操作にしても、自分が何に対して重きを置いているのかを優先してロッドを選ぶのが、最終的に後悔しないロッドの選び方です。
リールとのバランスも大事
小渓流など狭い場所での釣行は必然的にキャストが難しくなるので、ブレーキの機能がしっかりしているベイトフィネス専用のリールがおすすめです。
特にベイトフィネス専用リールは、ロッドのポテンシャルをうまく引き出してくれるものも多いので、ロッドを選ぶ際の参考にするといいと思います。
ベイトフィネス専用リールは軽量ルアーを楽に投げられる機能が備わっていますが、機種によってそれぞれ強みが違いますから、しっかり調べて自分のスタイルとマッチする機種を選びたいですね。
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渓流ベイトフィネスグラスロッド5選
渓流ベイトフィネス用のグラスロッドとカーボンロッドのそれぞれの特徴や性能をご紹介しました。
ここからはおすすめの渓流ベイトフィネス用グラスロッドを紹介します。
パームス エゲリアネイティブ ETVC-46XUL
エントリーモデルのグラスロッドの先駆け的なメーカーといえるパームスですが、フィールドごとにロッドの選択ができるよう、様々な商品展開を行っているメーカーです。
その中でもETVC-46XULは渓流ベイトフィネスの初心者向けなのはもちろん、中上級者にも楽しめるモデルとなっていて、多くのアングラーを楽しませてくれています。
メジャークラフト ファインテール グラスモデル FSG-4102UL
人気のファインテールシリーズにグラスロッドが登場しました。
ファインテールのグリップはそのままに、軽量で張りのあるUDグラス採用によりブランクスは柔らかくもしっかり張りを残した作りになっています。
現行のファインテールは若干張りが強めなので、現行のファインテールの硬さが気になる方は、グラスロッドの方を選択してみるとまた違った感覚を楽しめるでしょう。
Fishman Beams blancsierra 3.9UL LIMITED FB-39UL
北海道に拠点を持つFishmanはベイトタックル専門メーカーで、掲げるテーマは、0(ゼロ)バックラッシュ。
ブランシエラは胴からしっかりと曲がり非常に投げやすいロッドに仕上がっています。
小型魚のバイトを弾かない繊細なティップでありながらも、キャストコントロールを兼ね備えた完璧な一本となっています。
ダイワ シルバークリーク グラスプログレッシブ 51LB-G
ついにダイワからベイトフィネス用グラスロッドが発表されました。
超高密度グラスにカーボンを合成したハイブリッド型グラスロッドです。
グラスロッド特有のグラつき感や腰の無さを排除してもグラス並みによく曲がり、暴れる魚の力を吸収ししっかりと追従してくれます。
シルバークリーク エア TW ストリームカスタムと合わせると最高の組み合わせになりそうですね。
TURINGMONKEY グレート 鱒レンジャー改 CT40 ダークナイト2 Mブラック
渓流ベイトフィネスの常識を覆すような超低価格ロッドの鱒レンジャー。
初めて渓流ベイトフィネスに挑戦する人にとって、メーカーの利益を度外視した価格はとてもありがたいとしか言いようがありません。
さすがに渓流ベイトフィネス専用ロッドのようなクオリティや高級感はありませんが、それでも充分な性能を持っていて、実釣でもそこそこ楽しめるロッドです。
まとめ:グラスロッドはカーボンロッドとは一味違った魅力がある
渓流ベイトフィネスでグラスロッドとカーボンロッドの違いについてまとめてみました。
ショートロッド(特にトラウト用ルアーロッド)は、ロッドを短くすればするほど曲げやすくするためにブランクスを細く薄くする必要がありますが、ブランクスを細く薄くすればするほど折れやすいロッドになってしまいます。その点グラスロッドは素材自体が柔らい性質を持っていてカーボンでは中々出せない粘りがあるため、渓流ベイトフィネスおいても近年見直されている素材です。
グラスロッドはキャストが得意な方でも違った楽しみ方を引き出してくれるので、キャストが得意じゃない方はもちろん、キャストが得意な方も是非使ってみてほしいロッドです。
渓流ベイトフィネスの世界観が変わりますよ。
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