「獣害」近年の北海道でのヒグマの異常行動について

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数日前に札幌市東区で起こったヒグマによる獣害事故。

過去にも南区の住宅街に居座り続けたヒグマが駆除されたニュースがありましたが、本来ヒグマはとても臆病な生き物で、人の姿を見ると一目散に逃げていく動物です。

北海道の中心都市となる札幌の人口の推移は2000年に約182万人、2020年では197万人となっていて、ここ20年で人口は上昇しています。

これほどの大都会で本来臆病な生き物であるヒグマよる獣害事故がなぜ起こってしまったのでしょうか。

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生息地の山でクマの餌が不足している

ヒグマは草食に近い雑食動物で、主にナラやクリなどの果実を食べていることが多いですが、春にはフキやミズバショウの他ウドやセリなど、季節によって柔軟に食べるものを変えています。

また、越冬に失敗して死んでしまったエゾシカを食べていることもありますが、積極的に生きているエゾシカを襲って食べているようなことは少ないようです。

一般的に言われるのは、過剰な都市開発の影響でヒグマの住む山に食料が不足し人里に下りてきて人間が残した食料を漁るヒグマが多くなったことですが、山にはたくさんの植物がありヒグマの食料が不足しているという根拠はなく、先日駆除されたヒグマの胃の中には食料がほとんど残っておらず、空腹だったにもかかわらず人間が出したゴミを食べた形跡もなかったそうです。

よって、自分もそうですが専門家の意見は山での食糧不足については否定的な意見が多いです。

ツキノワグマによる統計ですが、ブナの大凶作によるクマの大量出没が予想された2008年、結果的に人里に現れたクマの数はそれほど多くなかったという報告もあり、食料不足がクマの人里への侵入への要因の一つであるとしても、全てが都市開発による環境問題での出没件数への変化ではないことが報告されています。

ヒグマが人里に現れる本当の理由

ヒグマの最大の天敵は人間でも食料不足でもなく、自分より強いオスのヒグマです。

大きく強いオスのヒグマは人里離れた山奥に生息しており、力の弱いメスや若いオスはそれを避けるために違う場所での生活を選ぶわけですが、これには人間の生活環境の変化も関係しています。

平成に入り、高齢化社会などの様々な要因で里山を管理する人が減ったことや、農家を引退しても後継ぎが不在のまま休耕田畑が増えたこと、また田舎の人口自体が減ったことも要因の一つで、クマも人間も必要以上に接触しない人口が少ない農村地帯はいわゆるクマと人間との間にあるグレーゾーンのようなものであり、クマにとっては人間がいたらすぐに山に逃げることができる場所でしたが、以前はこのグレーゾーンが見えない境界線となっていて、過疎化が進んだことによりそのグレーゾーンが曖昧になったことから、札幌のような人が多い都会への侵入へ至ったと考えられています。

ちなみに、オスのヒグマの行動範囲は100km以上と言われており、自分のテリトリーを探すために大きく移動することが知られています。

札幌で駆除されたヒグマはオスでまだ5歳程度と若い個体であったことから、他のクマに合わずに自分が安全に暮らす山を探して山を下りてきたことが予想されます。

先日の札幌市で起こったヒグマによる獣害事故も、石狩北東部や当別方面から石狩川を横断して札幌に来たものと見られていますが、札幌市東区や江別は農業が盛んなため多くの水路などがあり、クマが身を隠しながら移動するには都合の良いものだとの指摘もあります。

また、元の石狩川である三日月湖やその他の旧河川には多くの樹木が生い茂り、容易に人が入ることができないため昼間でも身を隠すことができ、クマにとっては好都合である上、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などで夜間の人の出が少なかったことも原因の一つだという専門家もいます。

ヒグマの個体数は年々増え続けている理由

1990年までは北海道のすべての地域で春先にクマの駆除活動を行っていましたが、世界的な自然保護への意識の高まりから、当時の横路知事により1990年以降春クマの駆除が廃止されました。

これにより札幌圏(恵庭~積丹半島にかけて)のクマの生息数は上昇傾向にあり、札幌を含む石狩平野がこれを隔てるような形で人口が密集しておりクマの移動を妨げていたものの、クマ自体の密度が上がったことで若いクマが他の生活圏を確保するために危険を冒してまで平野部に出て移動を強いられているようです。

北海道の市町村別人口推移予測によると、2015年度から2045年度までの人口の増減は、ほぼすべての地域で減少が予測されていて、中でも道東地区は軒並み50%以上の人口減となっており、その他日高方面や日本海側の沿岸部も高い水準で人口減が予測されています。

これらの地域は元々クマの生息数が多い地域ですし、今後さらに過疎化が進み生活圏が減少していくことによってヒグマの数も増えていくことが容易に予想できます。

まとめ

人間が過去に生活していて放棄した土地や田畑などはいずれ自然に帰る時が来るかもしれませんが、元通りになるには何百年もかかるでしょうし、放棄した土地でも様々な事情でわずかに残った人が生活していますが、クマにとっての危険度は徐々に低下していることが考えられます。

そういった背景から人を恐れないクマが出現していることも事実ですし、今回のように都市部に迷い込む若いクマも増えていくでしょう。

このような事故が今後も継続的に起こるようなら、クマとの共存というきれい事では片づけられない問題になってきます。

特に都市部に侵入した若いヒグマは人間が得た知識での対策が通用しないことが大半で、今後は札幌市を含め北海道全体でヒグマへの対策を徹底していかなければなりませんし、場合によっては再び生息数のコントロールが必要になる時代も来るでしょう。

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