2018年より、船舶での釣りは国土交通省から承認されているライフジャケットの着用が義務付けられました。また、近年の釣りの事故の増加に伴い、陸からの釣り、いわゆるオカッパリの釣りに関してもライフジャケットの着用を推奨する動きも見られ、漁港や磯などの転落の危険が多い場所ではライフジャケットを着用している人も僅かながら見られるようになりました。
同時に渓流釣りに関しても、新たに専用のライフジャケットが開発され着用を推奨する動きも見られますが、場合によっては体の動きを妨げる可能性があるライフジャケットを着用する意味があるのか?といった声も聞かれます。
自分も数年前から港や磯では必ず着用しているライフジャケットですが、個人的に渓流に関してはメリットよりもデメリットの方が多いと考えています。今後も渓流ではライフジャケットを着用する考えはありませんが、渓流釣も含めたフレッシュウォーターの釣りでのライフジャケットの必要性について考えてみたいと思います。
渓流釣りのライフジャケットの着用に要否について
|
|
渓流釣りというジャンルで一括りにしてしまうと、水難事故が発生する確率は海での釣りと統計的に変わらないと思いますが、渓流釣りにも源流部の釣りから本流部での釣り、餌釣りやルアー、アユの友釣りなども渓流釣りの中の一つのジャンルでそれぞれ危険度は違います。
渓流釣りでライフジャケットの着用を推奨する意見は少ない
幸い?なことに、渓流釣りに関しては海と違ってライフジャケットの着用に関してあまりうるさく言う人はいませんから、着用する人はほとんどいません。
しかし、同じ渓流でも本流でのアユの友釣りに関しては、首から上しか出ないような深い激流の中でのやりとりもあり、実際には死亡事故も多く、渓流釣りの中でも割と危険度の高い釣りであるのは間違いないです。また、険しい源流部で高巻きのできないようなゴルジュを泳いで登る人もいます。
アユ釣りに関しては自分はやらないしやりたいとも思わないので、ライフジャケットの着用が必要かどうかに関しては、全く分からないので意見するつもりはありませんが、源流部でのゴルジュをを登るには、登山や沢登りなど、それなりの知識と経験が必要になってくるので、ライフジャケット以前の話になってきます。
個人の危機管理能力の問題
その他、釣り場での飲酒だったり、時間帯や季節、天気などの環境による条件もそうですし、高齢者の判断能力の衰えなどでも危険度は違ってきます。
他人に迷惑を掛けず、法に触れていないのであれば個人の自由ですから、酒を飲もうがおじいちゃんが海で釣りをしようが関係ない話ですが、自分は泳ぎも得意ではないし危険を回避する能力は他の人に比べてそれほど高くないと考えているので、海では必ずライフジャケットを着用するようにしています。
オカッパリでのライフジャケットの着用は義務ではない
港や磯など転落の可能性のある釣り場は常に危険と隣り合わせですし、遠浅のサーフでも離岸流やうねりによって事故が起こってしまうケースもあります。
過去に離岸流で甥っ子が帰らぬ人となってしまった経験から、そのような場所では釣り人全員にライフジャケットの着用を願っていますが、少しでも危険性があるからといって、どこでもかしこもライフジャケットの着用を推奨するのはこれまたおかしな話になってきます。
ライフジャケットを着用する意味は、水中に転落しても頭を浮かせて呼吸を確保して救助を待つためのものですから、野池や沼、里川のような水深が1mもないような穏やかな場所での釣りにライフジャケットが必要かと言えば、疑問に思うと思います。
そもそも釣りに限らず水辺に近づくこと自体が多少なりとも危険を伴うわけですから、どこでもかしこもライフジャケットを着用しなさいというのであれば、極端な話、公園の噴水でもライフジャケットを着用しなさいって話になります。
渓流釣りはライフジャケットを着用した方が良いのか
渓流釣りは時には激流を渡ったり増水中の中で釣りをする人もいますし、クマなどの野生動物と遭遇する危険性もあります。
渓流釣り師は人一倍危険を回避することに注意を払う
渓流では渡れないような激流を無理して渡るよりも、渡れそうな場所を探すことの方が多いですし、どうしても渡れない場合は一度大きく離れて高巻きする人が大半ですから、ライフジャケットが身を守ってくれるからといって流されてしまうような激流を渡る人なんていませんし、もしいるとすれば、それは経験が浅くスキルのない人が大半です。
また、クマに遭遇しないために、クマ鈴を鳴らしたり見通しの悪い場所では大きな声を上げたりなどしてクマとの不必要な接近の確率を下げていて、その上で最終手段となるクマ撃退スプレーやナタなどの武器を持ち歩くようにしています。
命を救うのはライフジャケットではなく自分の判断能力
ライフジャケットは転落した場合に浮力が働いて溺れるのを防ぐものですから、溺れる原因を作らないことに重きを置くべきで、落ちてもライジャケがあるから多少の無理はできると思うのは非常に浅はかな考えです。
渓流釣りにライフジャケットを着用するメリットとデメリット
最終的には、ライフジャケットの着用が義務化されていない釣りに関しては、自身で危険を回避することが必要で、ライフジャケットはその中の一つの方法ですから、それ以外にもっと高い安全策があればそれを実行することで危険を回避できますし、渓流でも危険な場所では入水しないという選択肢もあります。
また、ウェーダーの中にある空気が浮力となって落水時に足が浮いてしまい大惨事となる場合もあるので、着用時は必ず空気を抜いてからベルトを締めて中に空気が入らないようにするのが正しいウェーダーの着用方法ですが、知らずに着用している人もいると思います。
渓流でのライフジャケット着用のメリット
渓流ではウェーダーを着用していることが大半ですから、ウェーダーを履いたまま泳いで岸に上がることはほぼ不可能です。そのような時にはライフジャケットを着用しておくと浮力に任せて流されることで岩などにしがみつくことができるかもしれません。
特にアユ釣りでは激流の中でのやりとりなので、流されにくいウェットスーツのようなタイプのウェーダーを着用しますが、最近は首に取り付けるタイプのライフジャケットが販売されています。
渓流でのライフジャケット着用のデメリット
ライフジャケットを着用すれば溺れるリスクは減りますが、ウェーダーとライフジャケットを着用することによって熱中症のリスクも高まりますし、ウェーダーを履いていることでただでさえ動きにくい上にライフジャケットを着用することで、さらに体の動きを妨げてしまい、普段は難易度の低い場所でも危険性が上がる場合もあります。
ウェーダーを履かずに渓流釣りをするのは、岩や草木の他、害虫や蛇などの野生動物によって怪我をするリスクが高まりますし、渓流のような水温の低い所では真夏以外は足を濡らすという行為自体が危険です。
ライフジャケットを着用した方が良い場合もある
例えばダム湖などの人造湖は、水位の変化が激しく岸際は泥が堆積しているなどして滑りやすくなっている上、岸から急に深くなっていることが多いため非常に危険です。また、手漕ぎのカヤックやボートを利用して釣りをする場合のライフジャケットの着用も義務化されていませんが、転覆や落水した場合は自力で岸まで行くことはかなり難しいですから、ライフジャケットを着用した方が良いでしょう。
ライフジャケットを着用するかしないかの判断はどこで?
渓流と他の釣りの大きな違いは、危険度は同じだとしても種類が全く違うということです。
港では車を停めて岸壁で釣りをするまでの間に事故に遭うことはほぼ無いでしょう。しかし、渓流では川までのアプローチの際に足を滑らせたり、乗った岩が動いたりで事故に遭うケースがあります。
磯に関しては足元が悪い中での遡行ですから、ある意味渓流釣りと似ている部分もありますが、渓流は突然大きな波が来ることもないですしアプローチで危険を回避できれば磯ほど危険ではないです。
個人的にはどこに危険があるかで判断し、海では必ずライフジャケットを着用するといった考えでいますが、渓流釣りに関しては、ライフジャケットを着用するよりも着用しないメリットの方が大きいので着用していません。その分遡行には十分注意していますし、自分は体重が軽く流されやすいので、膝より上の深く流れの早い瀬は絶対に渡りませんし、ゴルジュがあるような源流部にも行きません。
今後も義務化されない限りは渓流ではライフジャケットを着用するつもりはありませんが、義務化されるよりも救助が困難になるような山深い場所での釣りが禁止になるでしょうね。まあそうなってしまえば登山や沢登りも禁止になるでしょうから、ありえないですけどね。
本格的な渓流釣り師からすれば常に安全パイを取り続ける面白みのない釣りをしていますが、安全を最優先しても釣果に恵まれる北海道という恵まれた環境で、渓流の風景と美しい鱒に出遭えるのですから、それで十分すぎるくらい満足しています。
あくまでも趣味の中での個人の考えを他人に押し付けるのはタブーですから、義務化されていない以上、必要と思う方は着用すれば良いですし、必要ないと思うなら着用しない考えで正しいと思いますが、同じ釣りでもそれぞれのジャンル別に危険度が違うのでそれぞれに別に考える必要があります。
ライフジャケット(救命胴衣)を着けて釣りをするのはダサいの?
|
|
コメント