ヒグマによる人身事故多発!山のプロに聞いた釣りや山菜取りで事故に遭わないための最善策

当ページのリンクには広告が含まれています。

今年も早くもヒグマの目撃情報が相次いでいますが、昨年札幌市で起こったヒグマによる人身事故は記憶に新しいところです。

雪も融け暖かくなってくる春から夏にかけては、山菜取りや釣り、登山などに最適な季節ですが、同時にヒグマの活動も活発化する時期です。

北海道のヒグマ生息数は年々増加傾向で、全道の生息数は20000頭ともいわれており、1990年の札幌圏の春クマ駆除の廃止が原因かは不明ですが、ヒグマによる人身事故はここ数年で倍増していることから、もはや札幌だけではなく北海道全体の問題といえるでしょう。

暖かくなってくる季節は我々人間にとっても楽しい季節ですし、クマは怖いけど山菜採りはしたいし釣りもしたいという人も多いと思います。

ヒグマは最大で400㎏以上にもなる猛獣ですから、万が一襲われれば命の保証はありませんが、しっかりと知識を持って対策をしておけば、かなりの確率で遭遇を防ぐことができます。

記事の内容
  • ヒグマに出会わないようにするにはどのような対策が必要か
  • 危険なクマの特徴
  • もしクマに出会ってしまったらどのように対処したらいいのか

今回は、渓流釣り歴40年の林業関係の知人から聞いたヒグマへの知識と、自身の経験から得たヒグマに合わないための対策と実際に遭遇してしまった際の対応法を紹介します。

目次

ヒグマの活動時期

地域やその年による気候の違いによってバラつきはありますが、例年だと12~3月の冬の間に樹木の洞などに穴を掘り冬眠をします。冬眠とはいっても、仮死状態など活動を全く止めるような状態ではなく蓄えた脂肪を使いながら静かに過ごします。メスはこの期間に出産を行う個体も多く、春の活動時期までじっくり子育てを行います。

冬眠から覚めたヒグマは食べ物を探しながら山を移動しますが、力のない若いヒクマは強いヒグマに追い出され人里近くまで下りてくることもあります。この時期に人身事故が多いのは、自分のテリトリーが決まっておらず、食べ物を探しながら安全な住処を探すために移動中の若いクマに襲われるといったケースが多くあります。

ヒグマによる死亡事故の内訳(2000~2020年)

  • 山菜採り 約70%
  • きのこ採収 約14%
  • 林業を含む山林での作業 約8%
  • 釣り 8%

ヒグマによる人身事故は、4~6月が最も多い季節となっており、次いで10月が事故の多い季節となっています。

中でも山菜採りが圧倒的に多く、近年は狩猟中の事故以外では農作業中の事故も多くなっています。

ヒグマの事故に遭う人の特徴

山菜採りはグループで入山しても単独で行動することが多く、早朝から山に入る人も多いことから、昼行性でありながらも早朝や夕暮れ時に活動するヒグマの活動時間とリンクしていることがよくわかります。また、クマ鈴などの鳴り物を携帯していない例も多数あり、危機感の低さが伺えます。

一方、釣りも単独行動が多いですが、山菜取りの人よりクマ鈴やクマ撃退スプレーの携帯率は高く、危機感を持って行動している人が多いようですし、山林作業はある程度の人数で重機など音が出るものを使って作業していることから事故が少ないといえます。

危険なクマの特徴

ヒグマは本来好奇心が旺盛な割に臆病な性質ですが、人間のように個体による性格の違いがあり、時には説明が付かない行動を取る危険なクマも存在します。

山にいられなくなった若いクマ

オスのヒグマは、親離れしてすぐに行動範囲を広げます。メスのヒグマの行動範囲は数十kmですが、オスのヒグマは自分の餌場住処を探すため、行動範囲は年間数百kmといわれています。

一般的に、親離れしたオスは安全な山奥に住処を探すことが多いのですが、昨今のヒグマの増加に伴い、山奥には強いオス熊が多く、危険を冒してまで山を下り安全な山を探さなければならないケースが増えているようです。2021年に起きた札幌市での人身事故はまさにそのケースだったといえます。

好奇心旺盛な幼稚なクマ

独り立ちして間もない若いクマは、精神的にまだまだ幼稚で、危険なものとそうでないものを区別できない個体もいます。通常人間に逢ったクマはほとんどが自分から逃げるのですが、そのような精神的に成熟していない若いクマは、稀に自ら人間に近づくことがあるといわれています。

子熊を連れた母熊

クマは母性愛が非常に強く、命の危険も顧みず自分の子供を守ろうとするため非常に危険です。

よって、子熊を発見してしまった場合は、母熊の存在が確認できない場合でも速やかにその場から退避するようにしましょう。また、稀ではあります子熊の亡骸を見つけた際も母熊が近くにいることが多いので、亡骸に興味を持ったりせずすぐに退避しましょう。

食べ物を所有している

ヒグマは食べ物への執着心が強く、自分の獲物を奪われることを嫌うため隠すことがあります。特にエゾシカなどを狩った場合は、「土まんじゅう」といって土や枯れ草などを被せて自分の獲物を隠すことが多いので、知らずに近づくと非常に危険です。山中で腐敗臭や野生動物の死骸などを見つけた場合は直ちにその場から離れるようにしましょう。

ヒグマに出会わないようにするための対策

ヒグマは本来臆病な生き物で、自ら市街地へ出てくるような異常な個体でない限りは、人間の存在に気付いた時点でヒグマの方から立ち去ってくれるものですが、人間側も注意をしないと危険な場合もあるので、山中で行動する時は必ず対策を行うようにしましょう。

ヒグマの活動時間には山に入らない

早朝はヒグマが餌を探しながら活発に動く時間帯で、遭遇する確率もグンと高くなります。臆病な割に行動は大胆な個体も多く、国道脇で餌を食べたりしているのを目撃したこともありますし、墓地の中を徘徊しているのを見たこともあります。日中は暗い草藪の中でじっとしていることも多いので、無用な藪漕ぎを避け早朝や夕方には山に入らないことが大切です。

鳴り物を携帯する

クマ除けベルは歩いていると勝手に音が鳴るので、ヒグマに対して人間の存在を知らせることができます。行動中に紛失してしまうこともあるので、音質の違うものを複数所持しておくといいでしょう。クマ鈴は人間の存在をクマに知らせてしまうため、逆にクマを寄せることもあるという意見もありますが、確率論でいえばクマの方から退散してくれる場合が圧倒的に多いので、ゼロ百諭で判断せず山奥では必ず携帯するようにしましょう。

もしクマに出遭ってしまったら(距離別)

至近距離でヒグマと遭遇してしまった場合は、命を守る行動をしなければなりません。場合によってはクマと戦う覚悟をしなければならないこともありますが、普通の人間がクマと戦って勝てるわけはありません。

クマとの距離が縮まり、クマの方から突進しては下がるといった行動を起こした場合は、間違いなく攻撃態勢に入っている時です。

100m以上の距離がある場合

静かにしていればほとんど気付かれることはないです。物音や匂いなどで気付くことはあっても襲ってくることはないので静かにその場から立ち去りましょう。

100m以内の距離

確実に気づかれているので、目をそらさずに静かに行動を見守ります。もしこちらに近づいてくるようなら向き合ったまま同じくらいの速度で後ずさりし、相手の興味がなくなるのを待ちます。ほとんどの場合、危険がないことに気付くとクマの方から立ち去ってくれます。

50m以内の距離

かなり危険な距離ですが、リスクを負ってまで襲い掛かってくることはほとんどありません。ですが、稀に人間に対して興味を持つ若いクマもいるのは確かで、そのようなクマはかなり危険な個体なので注意が必要です。

危険なクマの特徴は以下の通りです。

  • 人間に向かってくる好奇心旺盛な若いクマ
  • 子熊を連れた母熊
  • 近くに餌を隠しているクマ

20m以内の距離

非常に危険な距離です。クマの方から近づいてくる場合は戦う準備をしなければ命を守ることができない距離です。

大声を出したり走って逃げるなどは自殺行為なので、絶対にしないよう冷静に状況を判断します。

  • 立ち木の陰に隠れる
  • クマスプレーの安全ピンを抜かず噴射の準備をする
  • 目を合わせずクマの前足の動きを見ながら静かに後ずさりする(静かに話しかけるのも効果あり)

といってもこれだけの至近距離で冷静にいられる人はほとんどいませんが、ここまでの状況下でもクマの方から逃げていくのが大半です。

10m以内

間違いなくクマの方から攻撃態勢に入る距離です。何度か威嚇しながら突進してきて、急激に方向を変えるなどの威嚇行動を繰り返し取ることが多く、最終的にはしびれを切らして攻撃してくるか逃げていくかのどちらかになります。

クマスプレーを持っている場合は、安全ピンを抜いて構えたまま最も近くまで突進してくるまで待ちます。クマスプレーは一度外してしまうと二度と使えないだけでなく、風に吹かれるなどして自分の口や鼻から吸い込んでしまうと逃げるどころではなくなるので、確実に命中させられる5m以内に近付くまで我慢します。

いよいよ突進される距離が短くなり、前足が届きそうなほど近くまで来た場合は大声を出しながらクマの顔めがけて噴射します。上手く顔に命中したらクマは痛さに驚いて暴れ出すので、その隙に全力で逃げます。

あわせて読みたい
渓流釣りに役立つクマ撃退スプレーの効果とその使い方 渓流釣りには必ず必要とされる熊対策。 昨今の北海道は、ヒグマの生息数の爆発的増加の影響で、人間との異常接近の機会が増えてることが問題視されています。 当サイト...

クマスプレーは必ずカウンターアソールトなどのヒグマ対応のものを使用します。

クマスプレーを持っていない場合は、両手を大きく広げて大声で脅かすことで運よく助かる場合があります。

襲い掛かってきた場合は、何でも良いから近くにあるものを投げつけたり、木の枝で叩いたりして抵抗するしかありません。クマから命を守るための行動マニュアルもありますが、ほとんどの場合その通りにできる人はいないでしょう。

もしクマに出遭ってしまったら(状況別)

確実に襲われてもおかしくない距離(20m以内)で遭遇した場合の状況別の対処法です。

クマの警戒音

クマは警戒心の強い生き物で、物音や気配に対し「カフ、カフ」といった警戒音を口から発します。敵とみなしたものに対しては「ファッ、ファッ」という威嚇音を出すこともあります。

警戒音を出していない内はクマもそれほど切羽詰まった状況ではないので、静かにしていれば威嚇行動はしながらも勝手に逃げていくことが多いです。

子熊を連れた母熊

冬ごもりから出てきたクマは人を襲う体力はおろか、歩くことさえも困難なほど痩せ細りやっとの思いで餌を探していますが、子熊を連れた母熊に関しては状況が全く別で、近づきすぎると確実に襲ってきます。特に子熊はいるけど母熊が見当たらない時は子熊に対して興味を持ったりせず、すぐにその場から立ち去りましょう。

餌を保有している場合

クマは独占欲が強く自分の餌に対して非常に執着心が高い生き物です。特に春先など越冬に失敗したり道路で事故死した鹿の死肉を食べている時などは、後で食べるために地面に隠すことも多く、そこに近付く者を排除する行動を取ります。山奥で異様な死臭や腐敗臭がする場合はすぐにその場から立ち去りましょう。

藪の中で寝ているクマを起こしてしまった場合

クマが隠れている藪の中に人間が入ってしまった例で、山菜採りや農作業中の事故で多い事例です。クマは早朝餌を食べた後、背の高い草藪の中に隠れて休むことが多く、農家のトウモロコシ畑の中に隠れていた例もあります。むやみに草藪に入ったり見通しの悪い場所への侵入は特に注意が必要です。

もしクマに出遭ってしまったら(その他)

北海道内の山林は、ヒグマの生息域が拡大傾向にあり、ほとんどの土地でヒグマが生息しているといわれています。過去に目撃情報や事故がなくても新たに出没している場所も増えているので注意が必要です。

自宅付近でクマの目撃情報があった

民家近くに出没するクマは確実に異常なクマです。切羽詰まった状況でやむを得ず民家近くまで現れたケースや、人の近くに食べるものがあると学習してしまったクマは、山奥にいる熊に比べて人間に遭遇すると襲ってくる確率がグンと上がります。

近くで目撃情報があった場合の対処
  • 早朝や夜間の外出を控えるか車での移動をする
  • 食べ物や生ゴミを家の周りに置かない
  • 野菜や果物などの家庭菜園を一時撤去する
  • 定期的に草藪を伐採して常に見通しを良くしておく

運転中にクマを見つけた

車の中は安全ですが、むやみに近づくと攻撃してきます。後ろから追いかけてきたりボンネットに前足を掛けたりすることもあります。発見した市町村のホームページで確認して必要であれば見つけた時間や場所を詳しく報告する。

2021~2022年シーズンヒグマの発見および痕跡を多く見た時期や場所と時間帯

2021年は釣行回数が非常に多かったのこともあり、実物にヒグマの発見以外にも痕跡を見た回数は相当数ありました。

具体的なヒグマの気配

主なヒグマの気配と痕跡については足跡や糞になりますが、他にも臭いや気配にも注意が必要です。

足跡

クマはあまり足跡を残さない動物ですが、河原や泥の堆積する場所では、時々足跡を見る機会があります。

大きさは10~15㎝程が多く、5本の丸い指か鋭い爪跡のどちらかが残っていることが多いので、他の動物と見分けやすいです。足跡を見かけた際は周りに注意してすぐにその場を離れましょう。

クマの糞は特鋼が少なく、時期により食性の変化でも糞の状態が変わるので、他の野生動物と見分けるのが難しいこともあります。

よく間違えやすい他の動物は以下の三つ。

  • ヒト
  • タヌキ・アライグマ
  • キツネ・イヌ

特徴として多いのは、ヒグマの糞は臭いがあまり強くないことです。特に春から夏は山菜を食べていることが多いので繊維質が多く、夏以降は果実を食べることも多いので糞の中に殻や種が多く見られます。ただし、越冬に失敗したエゾシカや他の哺乳類を食べた時は、糞の中に体毛が残っていたり臭いがきついことがあります。

ヒトとタヌキについては臭いが強いのですぐにわかります。ヒトの糞は見かけることはほとんどありませんが、タヌキの糞は頻繁に見かけます。タヌキは溜め糞といって、一か所に糞をする場所を決めていることが多いようで、大量に積み上げっているのをよく見かけます。糞の内容物にクワガタやコガネムシなどの甲虫の上羽などがあればほぼ確実にタヌキと言って良いでしょう。

キツネの糞はヒグマの糞と似ているものも多いですが、どちらかというと細長く臭いがあります。また、タヌキ同様に昆虫を食べることも多いので上羽が含まれることも多いです。ヒグマよりも肉食性が強く、ネズミなどを食べる際は骨まで食べてしまうので、カルシウム分が多い白っぽい糞をすることがあります。

臭いや気配

ヒグマは深い草藪に隠れていることも多く、特にはっきりしない獣道や背丈が高い草藪での藪漕ぎは注意が必要です。風もないのに草が揺れていたり、部分的に不自然な倒れ方をしている場所はヒグマが隠れ家や寝床に使っている可能性もあるため、進入しないようにしましょう。

ヒグマの臭いはその時に食べているものによっても変わりますが、生臭い死臭のような臭いであったり、生乾きの洗濯物のような臭いのこともあります。

今はほとんどの家庭で室内で犬を飼うことが常識ですが、昔は庭の犬小屋で飼育するケースも多く、あまり衛生的ではない外で飼われている犬小屋と似たような臭いがすることもあります。

また、山中でアンモニア臭がする場合はエゾシカやキツネの尿の臭いの場合が大半ですが、ヒグマの可能性も否定できないので、周りに足跡や糞などがないか確認してから進むようにしましょう。

2021年5月空知管内を流れる河川の支流(糞と足跡)

  • 天候 曇り
  • 入渓時間 13:00~15:00

国道274号線沿いを流れる支流で本流へ繋がる下流部にて、偶然見つけた駐車スペースで白骨化したエゾシカの亡骸とヒグマの足跡、糞などの痕跡を発見。

古いものだったので危険性は低いと判断して入渓しましたが、すぐ近くには住宅地があり、毎年ヒグマの目撃情報が相次ぐ民家とヒグマの生息地が近い地域で、河原は家庭ゴミが非常に多く住民のヒグマに対する危機感が薄い危険な地域だと予想されます。

2021年6月 喜茂別町を流れる本流付近(糞を発見)

  • 天候 晴れ
  • 入渓時間 9:00~13:00

狙いのポイントに入渓しようと林道脇の駐車スペースを探していたら先行者がいたので、様子を見ようと橋の上に移動したところ橋の真ん中に巨大なヒグマの糞を発見。

先行者もいるしクマの気配も濃いので、無理はせず大きく場所を移動し車通りの多い国道沿いの支流に入渓。

上流側では大規模な道路工事中だったせいか、安心して楽しめる釣行でした。

2021年7月 上川地方を流れる河川の源流域(親子熊に遭遇)

  • 天候 晴れ一時にわか雨
  • 入渓時間 12:30~13:30

周辺は畑作や酪農などを行う山に囲まれたのどかな農業地帯で、工事用の林道があり川のすぐ横に駐車スペースがあるのでアプローチが非常に楽ですが、手つかずの自然が多く残っていて、ヒグマの出没情報が多い地域です。

川は倒木が多く鬱蒼としている野性味あふれる源流風景で、人の背丈を超えるイタドリやフキが多い見通しが悪い河川ため、川通しに遡行をしていたところ、入渓して一時間もしない内に親子熊に遭遇。

距離にして100m程で危険は少ないですが、子熊を連れているので万が一の事態に備えてクマスプレーをホルスターから外し、静かに親子熊の動向を見守ります。

クマ除けのベルの音に気付いた母熊がこちらの様子を伺った時に一瞬目が合いましたが、子熊を残したまま一目散に逃げていったため手を叩きながら大声を上げて子熊へも撤退を促します。

クマ避けベルは効果が無いという意見もありますが、クマ除けベルの音で人間の存在を先に知らせることで、不用意に近づくことを避けるための一定の効果はあることを再認識しました。

しかし、川の流れる音や風の音などでクマ除けベルの音がかき消されてしまうこともあるので、それぞれ音質の違うベルを三個携帯しています。

2021年8月支笏湖通り(道路脇で発見)

  • 天候 晴れ
  • 発見時間 7:00~7:30頃

喜茂別方面に向かう途中の千歳市から支笏湖方面に向かう道道16号線を走行中、自転車及び徒歩専用道路脇で野草を食べている体長1.0~1.5m程の若いヒグマを発見。

すぐ横は大型車も多く行き交う車通りの多い道道ですが、車の音に対しては反応なく慣れている様子。

ヒグマのオスは行動範囲が広く、付近を流れるママチ川を挟んだ千歳市向陽台と行き来しているものだとしたら、2022年5月に千歳市若草で駆除された若いオスのクマと同一個体だったかもしれません。

2021年9月日高管内(足跡と唸り声)

  • 天候 曇り
  • 入渓時間 14:00~15:30

太平洋にそそぐ日高町の河口から10kmほどの中流域にて、新規開拓を目的に入渓しやすそうだったので様子見のため農家の畑脇の林道からアプローチ。

河原が広く見通しも良いが、ウグイの猛攻が酷いため上流に向かって遡行中に15㎝程の足跡を発見。足跡は河原から藪へと続いていたので広い河原を歩けば大丈夫と意味不明な判断。

付近は馬産地で交通量も多く人の姿も頻繁に見かける農村地帯で、警戒しつつも上流に向かっていくと遠くで大きな銃声のような音と獣の唸り声が聞こえてきたので、箱罠か何かを仕掛けて駆除しているのかな?と、さらに上流を目指すも、そこには鮭が大量に遡上しており、ここはクマの漁場と推測し速足で脱渓。

帰る途中ハンターらしきオレンジ色のベストを着用した男性が数人乗ったRV車が林道から出てきたところを見ると、本当に駆除の最中だったかもしれません。

2022年8月 胆振管内の本流河川の上流部(糞を発見)

  • 天候 曇りのち雨
  • 入渓時間 11:30~13:00

職場の若い子から渓流釣りを教えてほしいとのことで、ヒグマの出没情報例がほとんどない有名河川に入渓。

雨が降るまでの時間勝負の予定でしたが、入渓後30分もしない内にやや強めの雨が降ってきたので、大きく場所移動しようと脱渓して車まで戻る林道を歩いていると道の真ん中に大きなクマの糞を発見。

見通しの悪い林道で比較的新しい糞だったため、警戒のために大声を上げながら車に戻り場所を移動。

過去30年でクマの目撃情報が全くない地域だけに、確実にクマの生息数が増えていることを実感した釣行でした。

2022年9月 日高管内の本流河川の中流域(エゾシカの亡骸と足跡)

普段通っているホーム河川の中流部で時間がある時に時々立ち寄る場所ですが、本流に注ぐ沢の流れ込み付近で大きなオスのエゾシカの亡骸を発見。

三週間前にも同じポイントに入渓していますが、秋にエゾシカの死骸を見るのは珍しく、クマが襲ったのか自然死したのかは不明。その時はなかったのでヒグマが運んだのかここで力尽きてヒグマの餌になったのかも不明。

ある程度時間が経過している様子で、ひどい異臭とヒグマの足跡が多数見られたので危険を感じすぐに退去し脱渓しました。

林業関係者に聞く渓流釣りで効果的なヒグマ対策

ヒグマの生息地は山深い奥地が大半ですが、昨今の生息数の異常な増加に伴い、ヒグマの生息域は確実に市街地付近まで広がっています。

渓流釣り歴40年の林業関係の知人の話では、確実なヒグマへの対策はやはりヒグマに遭遇しないことが一番で、最も大切なことだが万が一遭遇してしまっても絶対に走って逃げないこと、山の中で全力で走ると人間は100%転ぶと教えてくれました。

人里近くに現れる若いヒグマが最も危険

山奥に生息するヒグマは非常に警戒心が強く滅多なことでは人前に現れることはありませんが、人里近くに生息するヒグマは確実に人間の存在を意識して行動しています。

その中でも特に若い個体はまだ精神的に幼稚で色んなものに興味を持つことが多く、中には人間を恐れない個体も存在するそうで、特に過疎化が進んだ市街地では行政が追い払い行為を行ってもそこに居座るケースもあり、危険な個体と断定され度々駆除されています。

渓流釣りに行く際は、山奥以外ではない郊外の静かな田園地帯などでももちろんヒグマへの警戒は必要で、2021年札幌での人身事故も人里近くまで現れた若い個体の異常行動による事故です。

林業関係の知人の見解によると、本来の縄張りが他のクマに取られたか他の何らかの理由でそこにいることができなくり、仕方なく引っ越している最中に札幌市内に迷い込んだものの、パトカーやマスコミに追い回され興奮した状態でたまたま近くにいた住人や自衛官に襲い掛かったのではないかと推測しています。

本当に効果があるのはクマ除けのベルやホイッスルではなく○○

クマに遭遇した時はクマ除けのベルやホイッスルを鳴らしたところでクマは微動だにしないといっていました。

例外的にたまたま遭遇したクマが逃げなかっただけではないかと思っていたら、ほとんどのクマが逃げるという行動を取らないようで、重機の音にも臆することなく餌を探して歩いているそうです。

とはいえ、クマ除けベルは全く意味がないの?というとそうではなく、人同士の存在確認にも役立つし、ベルの音がする場所には人間がいて、危険だから近づかない方が良いよとクマに警戒心を持たせる意味ではクマ除けベルは多少の効果があるといっていました。

では、遭遇してしまった時にはどうすれば良いのかというと、ただ何もしないのが最善策で、クマの方から近づいてきたとしても大体が興味が無くなれば勝手に去っていくそうで、不必要に近づいてきた場合や人間の物に興味を持った時だけ大声を出して爆竹やロケット花火で追い払うそうです。

ナタなどの武器で応戦するのは有効か?

最終手段として反撃して自分の命を守るという意味では有効かもしれないが、ほとんどの人は怯えて動くことすらできないし、動けたとしても反撃を考えるよりがむしゃらに走って逃げるだろうから所持しているものを落とすだろうし、転んだ時に確実に上に乗られるだろうから、武器の携帯はあまり現実的ではないし、仕事以外で刃物を持って歩くのはあらぬ誤解を受けることもあるのでそこは慎重になった方が良いと言っていました。

渓流釣りでヒグマと遭わないために

渓流釣りでヒグマに遭遇することは滅多にないですが、実際に遭遇している人はいますし、自分も子供の頃から数えると通算で数回目撃しているので、ヒグマのテリトリーに侵入していることを意識して行動することが大切です。

藪漕ぎをしない

クマは耳が非常に良く、人間よりも先にお互いの存在に気付いています。クマは人間の存在を知ると多くの個体が深い藪の中に隠れてその場をやり過ごすことが多いそうで、クマの存在に気付かない人間がクマが隠れている藪の中に侵入すると、逃げられないと感じたクマは襲い掛かってくることが多いそうです。

よって入渓や脱渓ルートは入念にチェックし、少しでも藪を漕がなくても良いルートを使うだけでもかなり遭遇率が下がります。

見通しの悪い所は大声を出したり大きな音を立てる

川がカーブしていたり先が見えないような見通しの悪いポイントでは、爆竹などを鳴らすと良いそうで、大声を出したり手を叩くのも効果があるようです。

川が深く遡行が困難で高巻きを要する場合は、できるだけ開けているルートを使うか一度脱渓するのが得策だと言います。

知人に勧められたヒグマ対策アイテム

100%助かるという保証はないが、持っていた方が良いものを厳選してもらいました。

教えられたものは既にすべて携帯して入渓していますが、状況に応じた使い方などとてもためになる話を聞けました。

クマ除けベル

カウベルタイプよりも真鍮製などの高い音が出るタイプの方が音が良く通るそうで、数種類携帯しておくと良いそうです。

クマ撃退スプレー

使う機会はほとんどないそうですが、使う機会は確実に命の危険を伴う場合なので使わないに越したことはないでしょう。

音の出る花火

水に濡れるとダメになるのでジップロックなどに入れて常時ポケットに入れておくそうです。

撤退する勇気

渓流釣りの途中でクマの足跡や糞を見つけることは稀にあることですが、そこで釣りを続行するかしないかはその時の気持ちで大きく変わるもので、釣れている時はアドレナリンが出て恐怖心よりも好奇心の方が勝ってしまうことがあります。

そうして親子熊に遭遇した過去がありますが、本来であれば渓流釣りでクマに遭遇する確率なんて交通事故に遭う確率並みに低いもので、青信号で横断歩道を渡っていて車に轢かれる確率とそれほど変わらない数字ですから、クマの痕跡や自治体が発表しているヒグマの出没情報は黄色信号と認識して、渡るのをやめて引き返すことがクマに遭遇する確率を下げる最大級の対策です。

最後に

ヒグマ事故による駆除のニュースに対し、クマがかわいそうだとか保護施設に移送するなどの対処を求める声も聞かれますが、どちらも他の命をもらって生きている以上、戦わなければいけない状況はあって当然ですし強いものが弱いものを排除するのも自然な考え方です。

世界的にも人間が被害を被る猛獣は駆除して絶滅させた、または数のコントロールを行ってきた過去がある中で、むしろ増えすぎた野生動物まで保護するといった無知な考えを起こす方が異常だといえます。

幸運なことにまだ50m以内でヒグマに遭遇したことはありませんが、昔に比べて痕跡も含め山中でのクマの存在を感じる機会も体感的にかなり多くなりました。

自分で書いていて実際にこのような対処をできる自信は正直ありませんし、見通しの悪い渓流で遭遇した時は、クマスプレーの存在すら忘れ、声も出せずその場から立ち去ることもできませんでしたが、クマ鈴の音を聞いた途端クマの方から逃げていったことから、危険な距離でのクマの遭遇を防ぐことこそが最大の防御だということがよくわかりました。

もちろん渓流釣りの際はクマ撃退スプレーを携帯して歩いています。クマ鈴も複数身に付けて見通しの悪い場所ではうるさいほど鳴らしていますし、大声を出したり手を叩いて音を鳴らしながら進むこともあります。高いですが、本来危険が多い大自然と安全に遊ばせてもらうには必要な経費だと思っていますし、携帯しているだけでかなり安心感が違います。

自分も山に入るので人様に気を付けろといえる立場ではありませんが、クマと人間の距離が近くなってきている昨今の北海道の状況から、山中では最大限の対処をしなければクマに遭遇し事故に遭う確率が高くなるということだけはお伝えしたいと思います。

あわせて読みたい
【ビギナー向け】渓流釣りのマナーと安全に釣りを楽しむための装備を解説 長い冬が終わり雪代による増水が収まれば、北海道もいよいよ本格的なトラウトのシーズンに突入しますね。 大自然の中で行う渓流釣りはとても気持ちがよく、日々の疲れや...

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次