渓流トラウト用のミノーはさまざまな色や形が販売されていますよね。
そもそも渓流魚は非常に獰猛で好奇心の強い生き物であることは、多くの方がご存じだと思います。それは、野生のトラウトが常に飢餓と戦っているからです。
しかし実際には、水辺には水生昆虫だけでなく、小さな羽虫や甲虫など、魚たちにとって飢えとは無縁と思えるほど豊富なエサが存在しています。
では、なぜ簡単には食わないのでしょうか? その理由は「飢え」以上に、外敵による命の危険にさらされているからです。
目の前に落ちてきた虫を手当たり次第に食べようとすれば、たちまちカワガラスやヤマセミといった鳥たちの格好の餌食になってしまいます。さらに、小さな魚は大型の魚にも常に狙われています。
我々渓流ルアーアングラーは、トラウトたちの「警戒心」と「好奇心」という二つの要素のバランスを見極めながら、ミノーのカラーやアクションを変えるなどして試行錯誤しています。
では、「結局どのルアーカラーを使えば良いの?」という疑問が湧くかもしれませんが、その前に少しだけ宣伝させていただきますね。
これまでに約4年間でハンドメイドミノーを合計600本製作してきた経験をもとに、今回のテーマ「ルアーカラー」の選択について、持論を交えて解説していきたいと思います。
魚は視力が弱い生き物
ほとんどの魚は近眼で、視力は一般的に0.1~0.6程度と言われています。
我々陸上生物の多くは、目の中の水晶体の厚さを変えることでピントを合わせていますが、魚類は水晶体を前後に動かしてピントを合わせるため、目で物を見るという能力自体は人間ほど優秀ではありません。
そのため、視力が弱い分、魚には側線といって、体側に音や振動を感じることができるセンサーがあります。この側線があることによって、餌を見つけたり外敵から逃げることができるだけでなく、水中の障害物なども避けることができます。
トラウトはルアーの色を認識できているの?
人間ほど豊富な色を識別できるほどではありませんが、一定数の色の種類は認識できていると言われています。
その中でも、特にトラウト類はある程度の色の違いは識別していて、色だけでなくルアーに反射する光の強さでも判断していると思われます。
ルアーのカラーは関係ないって人もいるけど?
確かに、ルアーカラーは関係ないという人は一定数います。ただ、それはフィールドなどの環境に左右されるので、必ずしも関係ないとも言い切れないのではないでしょうか。
山奥の沢など、外敵の少ないところに生息する魚なら、何を投げてもすぐに食ってくるでしょう。極端な話、塗装されていないルアーでも釣れると思います。
それとは逆に、連日多くの人が入っているような人気河川であれば、季節や天候、時間帯、水色、水温など、様々な環境の違いで食いが変わることが多いのも事実です。
「リアル系のナチュラルカラーは魚よりも人間を釣るルアーだよ」なんて某釣りの神様がおっしゃってますが、筆者の場合、2024年はシーズンを通してチャート系の成績が悪く、ほとんどの魚をナチュラル系のルアーで釣っています。
管理釣り場などのエリアトラウトの場合、使用している餌のペレットに影響されることもあるので、特定のカラーに依存していることもあると思います。
ルアーカラーを選ぶ際の決め手
まず、最重要視したいのは、フィールドの状況です。
- 澄んだきれいな水なのか
- 普段から濁り気味の川なのか
- いつもは澄んでいるけど雪代や雨の影響で濁っている
- 天候は晴れているのか曇っているのか
ルアーカラーはフィールドの環境に合わせて選ぶことが非常に効果的だと言えます。
実際にネットショップで販売しているルアーを参考に解説していきます。
ナチュラル系リアルカラー
ナチュラル系のリアルカラーは、水の透明度の高いフィールドに有効なルアーカラーです。
ナチュラル系カラーは見切られやすいなどという人もいますが、渓流トラウトの場合は逆で、透明度の高いポイントではチャート系カラーの方が見切られるケースが多いです。
ナチュラル系は水中のルアーの動きが解からないので使いにくい
ナチュラル系カラーは水中のルアーを見失ってしまうことが多くなります。
基本的に、こんな状況下では、水中にあるものが見えなくて当然ですし、ルアーだけを見ようとすればするほど釣りが難しくなります。
見えないルアーをどうやって操作するのか
では、どうやってルアーの操作をするのかというと、キャスト時はルアーが空中にあるので、飛んでいくルアーを着水までしっかり見ていますが、ルアーが水中にある時はラインの動きとロッドに伝わる抵抗感の強弱で判断します。
そのため、感度の高いタックルを使用することと、ラインの色を蛍光色にするなどして工夫すると良いでしょう。したがって、グラスロッドなどの柔らかいロッドや透明度の高いラインはある程度の熟練度が必要です。
アピール系カラー
基本的に、暗い環境では赤金や黒金などのシルエットがはっきりしたものが良いでしょう。濁りが強くても晴れた日の日中などはチャート系も効果が高いです。
アピール力の高いチャート系カラーは見切られやすい

実は、透明度が高くて魚の警戒心が強そうなフィールドでも、チャート系カラーのルアーはよく釣れます。ただし、一発で食わせないと二度目三度目に食わせることはほぼ不可能というほど見切られやすいカラーでもあります。
朝夕の薄暗い時間は赤や黒が有効
朝夕や曇りの日は、太陽の光が水中まで届かず、せっかく魚の警戒心が薄れている状況なのに、ルアーのアピール力が落ちてしまうことがあります。
そのような場合アピール力の高いチャート系も有効ですが、黒金や赤金、黒銀や赤銀など、どちらかというと派手なカラーというより、一瞬ギラっと光るような明暗のはっきりしているカラーの方が効果的です。
アワビカラーはどうなの?
猫じゃらしは猫の狩猟本能を刺激して猫が遊ぶためのおもちゃですが、規則的に動かしているよりも、ランダムに強弱をつけたほうが猫が夢中になって飛びついてくることが多いと思います。
実は、トラウトもこれとよく似た性質を持っていて、不規則な動きや予測不能な動きをするものに強く反応します。
しかし、ルアーは本来、左右対称の形をしており、自ら動くことはできません。動力はあくまでアングラーの操作によるもので、ラインアイを通じてルアーへとエネルギーが伝わる仕組みです。したがって、ただ巻いているだけではほぼ規則的な動きしかできず、波動や光の反射も一定になりがちです。
では、どうすればルアーに「不規則な動き」を加えられるのか? その答えのひとつが、光を乱反射させるアワビカラーということになります。
パーマークの有無は関係あるの?
個人的にはパーマークの有無は関係ないと思っています。
しかし、パーマークは幼魚斑といって、サケマスの未成熟個体にある模様ですから、それらを捕食対象にしている大型魚には効果があるのも事実です。
実際に北海道では、遡上アメマス(エゾイワナの降海型)や、大型化し魚食性の強くなったブラウントラウトを狙う場合は、鮭の稚魚を模したルアーが非常に人気です。
魚種によっても好みの色が分かれる
渓流ルアーフィッシングでの最大の対象魚であるヤマメは、特定のカラーというよりも、ギラギラと強い光を発するヒラ打ち系のルアーに好反応を示すことが多いです。
イワナにもヒラ打ち系は有効ですが、蛍光イエローなどのチャート系のルアーがより効果的です。
ニジマスやブラウントラウトなどの魚食生の強くなった大型トラウトなどは、あまり激しい動きよりも川底を這うような動きをするルアーに反応を示すことがあります。
これは、急流に流されないように川底で耐えている小さな魚や、川底の餌を食べているドジョウなどを捕食の対象にしていることが多いためです。
そのため、割と細身のシルエットで、マット系などの地味なカラーに好反応なことも多いです。
筆者のルアーカラーローテーション
筆者は基本的に透明度の高い河川に行くことが多いため、ナチュラル系のミノーを使うことが多いですが、追ってきてもすぐに戻ってしまったり、警戒心が強いなどで反応が薄い場合は、チャート系に変えるといったローテーションが多いです。
また、濁りが強い場合は最初からチャート系を使うこともあります。
地元の川で薄暗くなった夕マズメだけやる場合は、時間も限られているので黒金や赤金だけで通す場合も多いです。
まさかこんな色で?意外と盲点になるルアーカラー
ルアーカラーで意外と盲点になりがちな色は、「白」
白いルアーってトラウト用ではあまり売られていませんが、実は意外と釣れる色だったりします。
特にニジマスやブラウントラウトなどの洋鱒には、一定の効果があります。白一色でも良いですが、ラメが入っていたり、ワンポイント的に蛍光赤やグリーンなどの差し色が入っているものも効きます。
ただし、購入するアングラーが少ないせいか、メーカーもあまり作りたがらない色なので、見つけた際にはルアーケースの中に一個忍ばせておくのも良いでしょう。
【まとめ】ルアーカラーを柔軟に選択して確実に一匹を釣り上げよう!
ルアーカラーの選択って重要じゃないようで割と重要だと思います。
良く釣れる釣り場では色について選ぶ必要はないかもしれませんが、釣れない時に何をしたら良いのか?を知るためにも、上手なルアーカラーの選択をすることで、より釣りの引き出しが増えて釣果アップにも繋がることでしょう。
最後におさらいします。
渓流ミノーイングでは以下のカラーを持っておくと良いでしょう。
- ナチュラル系リアルカラー
- チャート系カラー
- 黒・赤系カラー
この三種類をフィールドの環境に合わせて使い分けると大体の河川で好反応が得られるはずです。
以前このカラーで釣れたからと言って、一色のみの一辺倒にならず、柔軟に変えていくと良いでしょう。
ぜひこの記事を参考にして、今シーズンも渓流ルアーフィッシングを楽しんでくださいね。
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